ものをつくるということについて(2)-雪の結晶

 雪の日は静か。灰色の空から、ぼた雪が降りてくる。雪の結晶のこと、娘との会話の中でふと考える。結晶はどのように成長するのかなあ。とても美しい形は、その成長が微妙な表現。ものがあるということは、殻があるから存在する。細胞に核があり、細胞膜があるように、眼に見えるもののかたちは、それを取り巻く世界と境する。その境が美しくも、醜くも見えたりする。素直に和敬にして境界というものを感じたとき、すべてが美しく観えるのかもしれない。氷の粒が冷気と出合い、境を縫って成長する時、えも言われぬ美しい雪の結晶になるのだろう。意識の中にない見えない境に深い思いをいだきながら、ロクロの上で土は伸びてゆく。
 外は雪。ストーブのわき、剥いた林檎の薄い皮から、美味しい香りが流れてくる。
1999年早春



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