ものをつくるということについて(4)-耨(ノク)

暖かな早春の日、私はある古い寺の山門をくぐった。正面本堂の中に、平安時代の阿弥陀如来さまが鎮座しておられる。天台密教の常行堂におられた仏様でお顔が厳しいとの説明を受けた。その日は、寺で特別な行事があり境内を散策し庫裡でお茶をいただいた。私は、奇遇にも般若心経の1字写経をさせていただくことになった。其の1字は阿耨多羅三藐三菩提の「耨(ノク)」という字であった。これも何かのご縁と思って家に帰って早速辞書で意味を調べてみたら、田を鋤き草を除く農具のくわ、又くわで田を鋤き草を除く行為という意味であった。
 はてしなく広がる荒地をくわで堀り耕すことを常行とし、厳しく人生を観つめ掘り探ることを教えていただいけた心境になった。
 そよ風が、小さな白い梅の花を揺らしている。まるで白のスパンコールのようだ。
2000年春



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