ものをつくるということについて(5)-飛行機雲

仕事を終えて帰宅するある日の夕方、西の空に飛行機雲が交差するところに遭遇した。1機は夕日に向かい西の空へ、もう1機は北から私の頭上に向かった。機影はかすかだが、その後ろから出る白い雲は勢いよく空のキャンパスの上をクロスした。まるで子供が描くように。そして、そのかたちが少しずつ崩れてゆく様は、バックに沈む夕陽と複雑に変化してゆく空の色と絶妙に溶けあって抽象絵画のようだ。一時我を忘れ、その造形にひたっていた。時として自然のつくりだす色は美しく、自分の存在を忘れさせてくれる。・・・ある小道で出会った紫ツユクサの淡い色彩も美しかった。
 かたちあるものは存在するというけれども、美しく心に残るものは、かたち無くともいつまでも有るということか。我を忘れさせてくれる存在に、美の本質は秘されていると思う・・・。印象が、永遠の色彩として心の中に刻まれる・・・。
 畏敬にして歓喜を与える妙色は、無相の相にして有相の身であるのか・・・。
2000年初夏



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